邦人安全スポット情報(2008年2月15日)
雪山スキーにご注意を!
バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア(BC)州及びその北側に隣接するユーコン準州は、北緯49度以北に存在するため、雪山も多く、特に冬は日本からも多くのスキー客が来て賑わう場所です。
しかし、雪山では思いがけない事件や事故、また急激な体調不良などが襲ってくることも忘れてはなりません。近年、当館管轄区域内で発生した日本人が巻き込まれた雪山での事件・事故の例を列記し、雪山に赴く際に注意すべき点をお知らせいたします。
1.雪崩事故
(1)2007年の4月2日の朝、BC州北部の標高2000mの山の中腹で雪崩が発生、日本人3人を含むスキーツアー客5人が巻き込まれ、27歳の日本人男性とカナダ人女性が死亡、残りの日本人観光客2人もそれぞれ重軽傷を負うという惨事がありました。
(2)一行は、ヘリコプターで頂上に降り立ち、そこから麓に向けて滑降する途中でした。救助された日本人観光客によれば、当日は天気は快晴だったものの、突然山頂からドーンという音が鳴ったかと思うと、あっという間に押し寄せる雪の波に飲み込まれたそうです。
(3)当日の雪崩警報は、雪崩発生の可能性は「低い」という意味の1段階から「非常に高い」の5段階のうち「要注意(3.5)」でしたが、地元の報道によれば、「要注意」段階での雪崩による死亡事故は全体の40%を占めているとのことです。
2.スキー中の心臓麻痺による死亡
(1)2007年12月10日の昼過ぎ、バンクーバーの北方にあるウィスラー・スキーリゾートでツアー客としてスキーをしていた59歳の日本人男性が突然倒れて意識を失い、病院に運ばれましたが残念ながら帰らぬ人となりました。
(2)原因は心臓麻痺と見られており、カナダに来て4日目の出来事でした。ご遺体は、一緒にスキーをしていた奥様、東京から急遽駆けつけたお子さんに付き添われ日本に搬送されました。
3.スキー場での遭難事件
(1)2007年12月24日の昼過ぎ、やはりウィスラー・スキーリゾートで21歳の日本人男性が一緒にスキーを滑っていた友人たちとはぐれ、行方不明になるという事件が発生しました。同行していた友人たちは、その男性が約束の時間に集合場所に現れず、夜になってもロッジや宿泊先にも姿を見せないことから地元警察に捜索を依頼しました。なお、当日の天気は快晴で、多くのスキー客が滑っていたそうです。
(2)幸いなことにその男性は、翌日の昼前になってレスキュー隊のヘリコプターに無事発見・救出され、そのまま病院に搬送されました。男性は若干衰弱した状態ではありましたが怪我もなく、命にも別状はなかったようです。救出された男性の話では、滑っているうちに自分だけコースを外れ、気がついたら山の裏側の谷底に到達してしまい、そこで一夜を明かしたとのことでした。
4.海外でウィンター・スポーツを安全に楽しむために
ご覧いただいたように、総領事館では、この一年の間に3度もスキー場における事件・事故の報告を受けました。
カナダは国土も広く、自然の豊富な国であり、ウィンター・スポーツを愛好される方々にとっては、まさにその醍醐味を味わえる場所かも知れません。
しかし、スキーやスノーボードなどを楽しむ前に、下記の対策や準備を講じておくことが賢明です。
(1)海外旅行傷害保険に加入すること。
転ばぬ先の杖として、海外旅行傷害保険に必ず加入することはもちろん、その際にカバーされる支払いの範囲、緊急移送などケアの範囲をよく確認しておきましょう。保険にも入らず、事件・事故に遭ったときの治療費や移送費は非常に高額なものとなりますし、結局家族や周囲の人々に負担や迷惑をかけることにもなりかねません。保険への加入も自己責任のうちと心得てください。
(2)気象情報・地理情報は十分仕入れておくこと。
上記の事件・事故のうち、雪崩の事案も、スキー場で道に迷った事案のときも、天気は快晴で見通しは良かったとのことです。しかし、山の天気は変わりやすく、また雪崩は天気にかかわらず突然襲ってくる現象ですので、見かけだけでの安心は禁物です。常に気象情報はツアー会社関係者、マスコミ情報などで確認するようにしましょう。
カナダのスキー場は、日本に比べて広いところが多いので、滑っている最中は迷わないように自分のいる場所を常に確認しながら滑るようにしましょう。また、カナダではコースが整備されていないような場所にヘリで飛んで滑り降りるヘリスキーも盛んに行われています。ヘリスキーをされる場合はツアーガイドの指示に従い、必ず行動を共にするようにしましょう。もちろん、いずれの場合も崖やクレバス、立木や岩の存在に常に気を遣うことは言うまでもありません。
(3)サバイバル手段の確保
道に迷ったり「おかしいな?」と思ったら、目印となるもの(カラーテープなど)を木に付けたりする準備を行うことも大切です。引き返す際や捜索の際の目印になります。山の中では携帯電話など繋がりにくいかも知れませんが、何かコミュニケーション手段を確保しておくことも大切です。また、発見されるまで時間がかかる時のために使い捨てカイロのような暖をとれるものや、携帯できる食料などを持っておくのもよいでしょう。
(4)体調管理は万全に
自分では体調は悪くない、と思っていても気付かないうちに長旅や海外でのストレスや疲れがたまって、突然体調を崩すこともあるかと思います。睡眠をしっかりとるなど体調管理を万全にしましょう。また、常備薬があるだけでも安心感が持てますので、常に持ち歩くのもよいでしょう。
領事館では事件・事故が発生するたびに、東京の外務本省とも連携し、24時間体制で対処すべく準備をしています。警察や病院、日本のご家族と連絡し、現地に赴くこともあります。今回ご紹介した3つの事件・事故以外にも、過去にはスキーやスノーボードの最中に崖から転落したり、岩や木に激突したりして、不幸にして亡くなられた方もおられます。そのような場合、私たちもご遺体を引き取るために日本から来られる家族の方にはかける言葉も見つからないのが正直なところです。そういった悲しい事件・事故を増やさないために何よりも肝心なのは、まず旅行者の皆様ひとりひとりが自分の身は自分で守る、自分で防げることは防ぐ、ということです。雪山には危険がいっぱい隠れていることを自覚し可能な限り対策や準備をされることが、楽しい思い出作りの大前提ではないでしょうか。
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