BC州における最近の犯罪発生状況と防犯対策

 

平成17年11月
在バンクーバー日本国総領事館

 

 米国に比べ凶悪犯罪が少なく治安が良好であると言われてきた当地においても、近年は日本人が被害にあった各種犯罪や様々なトラブルが報告されております。快適な生活環境とは裏腹に当地の犯罪発生率は決して低くはなく、特に財産犯罪は北米地域の中でも発生率が高い都市のひとつとなっています。

 日本は世界でも有数の「安全な国」であるため、自己防衛の意識が欠如しがちですが、防犯対策には「自分と家族の身の安全は自分たちで守る」という強い心構えが必要です。家族全員で犯罪を誘発する状況を排除し、身の安全に対する意識を強く持って被害に遭いにくい環境を作りましょう。

 以下の情報は、最近の邦人が関与した犯罪・トラブル及びBC州における最近の犯罪傾向と対策です。当地を訪れる日本人の皆様の当地での滞在生活を快適にするために少しでもお役に立てれば幸いです。


1.最近の邦人が関与した犯罪・トラブル
(1)賃貸住宅契約に関する被害

 バンクーバー市内のアパートに友人と同居していたワーキング・ホリデーの邦人女性が賃貸契約に関する被害にあっています。同居していた友人が引っ越し、新たな同居人と契約を更新する際に、ルームメイトが変わったことを理由に管理人から家賃の値上げを通知されたもので、このようなトラブルはカナダでの短期滞在者の間では多い例と言えます。

 また、今回のケースに限らず、賃貸住宅の問題としてよくあがるのは「引継ぎ」「テイクオーバー」と呼ばれる方法によるトラブルです。多くの場合、家主もしくは管理人を通さずに借家人同士による口頭のみでの契約、もしくは正式でない契約を結んでしまい、後に家主、管理人、及び同居人と問題になることがあります。
起こりうるトラブルとしては、ダメージデポジットが返却されない、入居を取りやめた場合でも手付金や前払い家賃が返却されない、というようなことが挙げられます。

 

(2)デートレイプピルにまつわる性的暴行

 デートレイプピルによる邦人女性の暴行被害が報告されています。この「デートレイプピル」は1998年頃からカナダ国内で出回っている"Rohypnol"という薬物で、この薬物を利用した犯罪の手口として多いのは、被害者が知らない間にアルコール等に混入され、それを飲んだ被害者は意識不明となり、その間に強姦されるというもので、極めて卑劣な犯罪です。

 今回被害にあった邦人女性はカナダに来て間もない短期滞在の女性で、パブで知り合った男性の誰かに、彼女の飲んでいたアルコールにデートレイプピルを混入されたらしく、とても気分が悪くなり彼女は気を失ってしまい、その後の記憶は全くなくそのまま数週間が過ぎたところで体調の異変に気付き、妊娠が発覚して暴行されたことが判明した、というものです。

 1993年に米国のフロリダ州で初めてデートレイプピルによる暴行事件が発覚して以来、カナダ国内でも被害者が増加する傾向にあり、現在、性的暴行の中で4件中1件は薬物使用によるという統計も出ています。最も恐ろしい事実は、薬により意識不明となることから記憶もなくなり、本人が何が起きたかを自覚していないということです。そのため、デートレイプピルによる犯罪件数は統計以上の被害者が存在していると言われています。この犯罪は被害者の精神的苦痛も大きく、また性的暴行による性病への感染や望まない妊娠・中絶など新たな問題を起こしうる可能性もあります。

 このような被害が起こる原因として、「デートレイプピル」に対する知識と認識の欠如があげられます。このような薬物の存在、それを利用した犯罪が増加していること等を常に認識し、警戒心を持つことが対策の第一歩となります。特に短期滞在者はカナダの生活に慣れてくると精神的な余裕も生まれて開放的になってくることや、カナダ人と交流を持ちたい、友人を作りたいとの気持ちから誘惑にのりやすくなることも考えられますので、常に気を引き締めて行動することが大切です。

 

(3)休暇期間中の窃盗被害

 学校が休みの時期になると、低学年層が加害者となる犯罪が多くなると言われています。遊び半分の軽い気持ちで、小銭狙いなどをするのだと思われます。今年の夏休みの時期にも、ある大学生が家の前に駐車していて車上荒らしにあったケースが報告されています。このケースで特徴的なのは、車の中にあったゴルフ道具、カーステレオなど、高価なものは盗まれておらず、被害額が小さかったということです。一般的に開放的になる夏休みの時期にこの種の犯罪は多くなると考えられますが、これからクリスマスやニューイヤーシーズンを迎え、空き巣や車上荒らし等窃盗事件の増加が予想されますので、被害にあわないよう注意しましょう。

 

2.BC州における犯罪発生状況と防犯対策
(1)窃盗
旅行者や短期滞在者を狙った置き引きが多く発生しています。不特定多数の人が集まる空港、駅、ホテル・ロビー、レストラン、ショッピングセンター等においては、貴重品を身から離さないようにし、足下に荷物を置く場合は足で挟んだり、常に所在を確認する癖をつけることが大切です。
置き引き被害にあったケースでは、ひとつのバッグ等にすべての貴重品を一緒に入れている場合が非常に多く見られますので、現金は分散させて所持する、旅券は必要のない限り携行せず旅券の写しで代用する等の対策を心がけてください。特に最近は日本人旅行者が利用するホテルのチェックイン、ェクアウ、またレストランで食事中のちょっとした隙にも置き引きの被害が頻発していますので、注意してください。外出する場合には、所持金は最低限とし、クレジット・カードを利用する、極力複数で出歩くよう心がけて下さい。
車上荒らしはリッチモンド地区のような広くて人気の少ない駐車場やダウンタウンの地下駐車場のように人目につきにくい駐車場で散発しています。

 警察の分析によれば、車上荒らしの犯人は運転者が駐車し始めた時から監視しており、貴重品を車内に隠すところも監視しているそうです。車外から見えにくいトランクに保管しても、簡易ドリル等により数秒で鍵穴を破壊されてしまいますので、自動車を駐車する際は人目のある駐車場を選び、車内に何も残さないことなどの注意が望まれます。
また、最近はスタンレー・パーク等の観光地で、記念写真等を撮るためにほんの1~2分の間ドアロックをせずに車から離れた隙を狙った犯行も目立っています。車から離れる際は時間の長さにかかわらず必ずドアはロックし、車内にバッグ等は残さないように心がけて下さい。

 

(2)詐欺
日系の電話帳等にも広告を出している中古車ディーラーから、事故歴・修理歴ともにないと言われて購入した中古車を、後日保険加入のため整備工場に行ったところ、ブレーキ等に欠陥が見られ走行するには危険な状態だということが判明するという、悪徳商法と見られるケースが報告されています。このケースでは、日本人は個人売買に慣れていないため、日系の電話帳等に広告を出している業者ということで安心してしまったところに落とし穴があったと考えられます。電話帳を作成している業者は、依頼があれば特に調査なしで掲載をするため、広告を通じての売買は十分注意を払う必要があります。また、契約書にも安易にサインすることがないよう、注意してください。
図書館等の公共施設やカフェ等、ファーストフード店で、現地事情に慣れていない日本人(特に女性)を標的とした被害が連続して発生しています。このような場所で男性が「私の妻は日本人で以前は日本に住んでいた。私のところで働かないか」等と声をかけられ、前金として手渡された小切手をATMで預け入れる際に暗証番号を盗み見られ現金を引き出されたり、借金の話を持ちかけられ信用して高額のお金を貸した後で逃亡されたりすると言う手口や、「至急現金が必要なので、貴女の口座に入金して現金化させてほしい」と小切手を見せられ銀行やATMまで同行し、引き出した現金を騙し取られるという手口が頻発しています。
また、デビット・カードを使用する場合は、店員や近くの人物の視線に注意し、暗証番号を知られないよう注意し、ATMの利用に当たっては、極力銀行などの金融機関の中に設置されているATMを利用するなど、日頃から十分に注意し、そのような被害に巻き込まれないように心がけましょう。

 

(3)女性に対する暴行

2004年5月頃から市内で最大、利用者も多いスタンレー・パークで連続暴行事件が報道されています。その手口はジョギング中の女性を、茂みの中から突然手首をつかんだり後ろから襲うパターンが多く、夜間に限らず、日中にも暴行事件は起こっています。2005年に入ってからも暴行事件は未解決のままです。

 貸部屋のテナント引き継ぎ(いわゆるテイクオーバー)広告を出した女性を狙った暴行事件が数多く発生しており、被害に遭っているのは殆どがアジア系の女性のようです。この種の事件は、金銭のみを対象とした強盗や怨恨ではなく、明らかに婦女暴行を目的としたものです。見ず知らずの男性を自宅に招き入れる際は、単独で会うことは避け、必ず誰かに立ち会ってもらいましょう。

 図書館、カフェ、本屋などの若者が集まる場所で、日本人女性に声をかけ、英語を教えるといって自宅に連れて行き暴行するなどの被害が出ていると報じられています。親しくない人に声をかられた場合には不用意について行かない、必要に応じて友人にも同席してもらう等の注意が望まれます。
語学学校等でも日本人女性を狙った被害が見受けられます。白人男性が「手伝いの事務員を雇いたい」等の甘言を用い、事務所に招き入れたり、執拗に自宅に送りたがる等して暴行するケースがあるようです。自宅で性犯罪の被害を受けた場合、被害者は裁判で「合意の下」と判断される可能性が高くなります。こういった状況に陥る前に日本で生活していたとき以上の警戒心を持つようにしましょう。

暴行事件を防ぐ上では、夜間の一人歩きを避けるのは勿論、自宅に来訪者があるときは相手方が誰であるかを確認した上でドアを開けること、見知らぬ人との会話で住所などをみだりに教えないよう普段から注意しましょう。悪質なカナダ人にとって日本人女性は騙しやすいと思われないよう、しっかり自衛意識を持つことが大切です。また、ホームステイ先でホスト・ファーザーに性的嫌がらせや暴行を受けた例も報告されています。日本の女性は被害を表沙汰にしようとしない傾向があるので狙いやすいとのパーセプションがあるという報道もありました。警察はアジア系女性に対して一般的な注意を呼びかけています。

 

(4)薬物問題
バンクーバーでは、マリファナに対する取り締まりが必ずしも厳格ではありませんが、これは少量のマリファナ所持の刑事裁判を簡素化するために罰金制度を導入しようという動きがあるだけであり、これらの薬物所持はあくまでも違法です。残念なことに、当地を訪れた日本人も警察に薬物密輸、使用、所持で逮捕されるケースがあります。薬物を勧められても誘惑に負けないようにし、麻薬には絶対に手を出さないよう心がけましょう。特に、バンクーバー市のイースト・ダウンタウン地区(特にメイン通りとヘイスティングス通りの交差点周辺地区)は薬物常習者、浮浪者や街娼が昼間からたむろしており、夜間には銃器使用の殺人事件が発生する等治安と風紀の悪い場所として知られています。興味本位でこれらの地域に立ち入った場合、被害にあう危険性が高まるのはもちろん、偶発的な犯罪に巻き込まれる可能性もありますので、特別の用事がない限り立ち入らないのが賢明です。

警察、医療関係者によると、最近はクリスタルメスと呼ばれる麻薬の使用者が急激に増加しているとのことです。このドラッグは「スピード」とも呼ばれ、30年ほど前に流行し、その後しばらくは治まっていたようですが、近年若者、特に女性を中心に急激に流行しはじめている模様です。これは日本でも一時期高校生等の間で流行したのと同様に他のドラッグよりも安価で手に入りやすいというのが若年化の原因と見られています。このドラッグは即効性が高く、常習者になってしまうと解毒に時間がかかると言われ、神経も侵されやすいので危険性が高いとされています。ビクトリアではこのクリスタルメスによって13歳のカナダ人の女の子が死亡した事例があり、低年齢層への蔓延が現実のものとなっているようです。

麻薬中毒者による強盗事件も発生しています。強盗に襲われた場合は、生命を守ることを第一に考えて、不必要な抵抗はしないことが大切です。すぐにポケットから財布を取り出そうとすることは、相手に武器を取り出そうとする動作と誤解されるおそれがありますので注意しましょう。金品は相手にとらせるか、ゆっくりと差し出すようにしましょう。被害を最小限に止めるために、クレジットカードを入れた財布と少額の現金を入れた財布の二つを持ち歩き、強盗に遭った場合には後者の財布を渡すようにするのも一案です。被害が身体生命ではなく金銭で済めば安いものと考えるようにしましょう。また、日本人が麻薬中毒者から暴力を受ける事件も発生していますので、麻薬関連の犯罪に巻き込まれないように十分注意して下さい。


(5)民事上のトラブル
家主と契約書を交わさずに若い日本人のテナント同士で勝手に部屋の引き継ぎを取り決めてしまういわゆるテイクオーバーという方法が行われています。ですが、これは単なる口約束に過ぎず本来のテナントとしての法的権利を持ちません。前のテナントを通して家主や管理人と会っていたとしても契約書が存在しなければ、還付金が支払われないケースや逆に修繕費として多額の賠償金を請求されるケースも生じる可能性があります。また、テイクオーバーで引き継がれた物件は、最後に入居したテナントが責任をとらなければならないという危険もあります。賃貸契約を結ぶ場合は、相手の人柄を問わず必ず契約書という書面により内容の細部までよく吟味した上で契約し、後のトラブルを未然に防ぎましょう。

 

ホームステイ先のホスト・ファミリーとの人間関係が悪化して暴力を振るわれたり、滞在の契約を途中で解約しようとしたところ、預けておいたお金を返金してもらえなかったりしたケースが見受けられます。ホームステイ先については、信用できる人を介して探すことや、途中解約に関する条項を含む契約書を作成しておくことが大切です。不幸にして暴力事件等が生じてしまった場合には、速やかに警察に届け、事件のケース番号、対応した警察官の氏名や連絡先を控えておきましょう。ホスト・ファミリーといえども他人であることを忘れずに、常識ある行動を心掛けることが大切です。

 

質な雇用主による労働に関する被害が相次いで発生しています。ワーキングホリデーの方、就労ビザ所持者等をターゲットとし、英語力不足や当地における労働基準に関する知識不足という弱みにつけ込んで、最低賃金以下の時給での雇用、有給手当の未払い、退職金の未払い等の悪質な雇用状況が報告されています。これらの雇用主は、英語を十分に理解しないため仕事選択の範囲が狭く、違法な労働条件でも我慢する、また日本人は民事裁判に訴えることなく泣き寝入りすることが多いという状況を熟知した上で雇用するという悪質なケースも多いようです。就職の際には、雇用主がカナダ人か日本人かを問わず、面接時には口約束だけでなく、必ず書面で契約書を交わしておきましょう。

 

(6)その他
冬季においては降雪や路面の凍結による交通事故に注意が必要です。
特にカムループス市周辺の5号線(Highway5)では、毎年自動車事故が多発しております。冬季は降雪のため、状況が急に悪化することもありますので、スリップ対策等事前の準備が必要です。路面が凍結するこの季節は、日当たりの悪いカーブなど道路状況の悪い場所での事故が多発しますので、常に安全運転を心がけてください。また、カムループス周辺に限定されることではありませんが、長距離を高速で運転している際に、カーブを曲がりきれずに横転し、後部座席でシート・ベルトをしていなかった人が亡くなるという事故も少なくありません。シート・ベルトは必ずするようにしましょう。

 

 万一、事故にあった場合は、直ちに保険会社に連絡すると共に、安全な場所で、運転免許証や身分証明書等で確認して、氏名、住所、電話番号、勤務先、車両登録番号、保険会社名、証券番号、保険会社連絡先をメモしましょう。事故現場で相手と口論すること、相手の書類にサインすること、自分の過失を認めて一方的に謝罪すること等は絶対にしないようにしましょう。また、相手が運転免許証を所持していない場合には、無免許運転や無保険の可能性もあるので、物損事故であっても警察に通報した方がよいでしょう。その他、できるだけ目撃者を確保し、証言内容、住所、氏名、連絡先を聴取しておきましょう。また、証拠保全及び保険料請求のため、可能であれば事故現場を写真撮影するようにしましょう。そのために使い捨てカメラやデジタルカメラを予め常備しておくことも一案です。負傷者がいる場合には、まず応急の救護措置(安全な場所への移動、止血等)を講じ、次に「911」通報により救急車とパトカーの派遣を要請しましょう。

 

(C) Consulate General of Japan at Vancouver, 800-177 West Hastings Street, Vancouver, BC V6E 2K9 Tel: (604) 684-5868. ページ更新日2006年8月10日